サプリメント選びで失敗しないための成分表示の読み解き方
食品・グルメ
サプリメントを手に取ったとき、あなたはパッケージのどこを見ていますか。表面の魅力的なキャッチコピーに惹かれて購入を決めてしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、本当に大切な情報は裏面に小さく記載された成分表示に隠されています。
この記事では、成分表示の正しい読み方を知ることで、自分に合った品質の高いサプリメントを見極める方法をお伝えします。
成分表示の基本ルールを押さえよう
サプリメントは食品扱いのため、食品表示法という法律に基づいた表示が義務づけられています。まず知っておきたいのは、原材料名の欄には使用されているすべての原材料が記載され、その順番にも意味があるということです。
原材料表示には明確なルールが存在します。食品添加物以外の原材料を、重量の多い順に記載し、その後にスラッシュ(/)や改行などで区切って、食品添加物を同じく重量順に記載することが定められています。つまり、最初に書かれているものが最も多く含まれている成分なのです。
たとえば「ビタミンC配合」とうたっているサプリメントであっても、原材料名の最初に「乳糖」や「デキストリン」といった増量剤が記載されていれば、実は栄養成分よりも添加物の方が多く入っているということになります。1粒の重さから栄養成分の量を引き算してみると、サプリメントの内訳が見えてきます。
栄養成分表示も重要なチェックポイントです。食品表示法では、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目を表示することが義務づけられています。この表示には測定誤差の許容範囲があり、一般的には±20%の幅が認められています(ただし、成分の種類や表示方法により許容差は異なります)。そのため、表示されている数値は目安として捉えるべきでしょう。
品質を左右するGMP認証マークの見方
サプリメントの品質を判断する上で、GMP認証マークの有無は重要な手がかりになります。GMPとは「Good Manufacturing Practice(適正製造規範)」の略で、製造管理と品質管理の基準を示すものです。
日本では2005年から健康食品のGMP認証制度が始まりました。2024年には大きな転換点があり、紅麹を含む機能性表示食品による健康被害を受けて、2024年9月から錠剤・カプセル状の機能性表示食品と特定保健用食品についてGMPの届出が義務化されることが決定しました。2026年9月からは製造管理がGMPに基づいて行われることが完全義務化されます。それ以外のサプリメントについては現時点では任意ですが、GMP認証を取得している製品は品質管理への意識が高いと判断できます。
GMP認証を行う団体は主に2つあります。公益財団法人日本健康・栄養食品協会(JHFA)と一般社団法人日本健康食品規格協会(JIHFS)です。それぞれ独自のマークを発行しており、パッケージにこれらのマークがついていれば、認証を受けた工場で製造されていることを意味します。
ただし注意したいのは、最終製品を製造する工場がGMP認証を取得していても、原材料を製造する工場が認証を取得していない場合があるという点です。2024年7月からJIHFSは輸入原材料に対するGMP認証事業を開始しましたが、原材料段階での品質管理はまだ発展途上と言えます。より安全性を重視するなら、原材料GMPについても確認するとよいでしょう。
添加物から見えるメーカーの姿勢
サプリメントを製造する上で、添加物を完全にゼロにすることはできません。粉末を機械で充填するためには流動性を上げる必要がありますし、錠剤にするには粉を固める成分が不可欠だからです。重要なのは、必要最小限の添加物にとどめているか、それとも過剰に使用しているかという点です。
最低限必要な添加物は、粉の流動性を向上させるもの(ステアリン酸カルシウムやショ糖エステルなど)と、粉を固めるもの、そしてカプセル原料(ゼラチンやセルロースなど)です。これら以外の増量剤、着色料、甘味料、香料、保存料などは、製造上どうしても必要というわけではありません。
原材料名の欄を見て、栄養成分よりも先に「乳糖」「セルロース」「ショ糖脂肪酸エステル」などが多数並んでいる製品は、添加物の配合比率が高いと判断できます。メーカーによっては、粒のかさを増やすためだけに増量剤を使用していることもあり、場合によっては9割以上が添加物という製品も存在します。
一方で、添加物にもこだわりを持っているメーカーは存在します。たとえば錠剤の滑沢剤として、ステアリン酸カルシウムの代わりにナタネ硬化油を使用するなど、より自然に近い素材を選択している製品もあります。添加物の選択から、そのメーカーが消費者の健康を第一に考えているのか、それともコスト削減を優先しているのかが透けて見えてくるのです。
なお、2024年4月から食品添加物の無添加表示に関するガイドラインが本格施行され、「人工甘味料不使用」「合成着色料不使用」といった表現が原則として使えなくなりました。これは消費者の誤認を防ぐための措置ですが、添加物の使用状況を知りたい場合は、やはり原材料名の欄を丁寧に読み解くことが重要です。
アレルギー表示で安全性を確認する
食物アレルギーを持つ方にとって、アレルギー表示の確認は命にかかわる問題です。食品表示法では、特定原材料として卵、乳、小麦、えび、かに、くるみ、そば、落花生の8品目について表示が義務づけられています。くるみは2023年3月9日に特定原材料に追加され、2025年4月1日から完全義務化されました(2025年3月31日までは経過措置期間でした)。
加えて、特定原材料に準ずるものとして、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの20品目について表示が推奨されています。2024年3月28日の改正でマカダミアナッツが追加され、まつたけが削除されました。
アレルギー表示には2つの方式があります。個別表示は原材料ごとに「(小麦を含む)」と記載する方法で、一括表示は原材料名の最後にまとめて「(一部に小麦・大豆・ごまを含む)」と記載する方法です。一括表示の場合でも、特定原材料及び特定原材料に準ずるものとして使用されているアレルゲンをすべて表示することが求められています。
サプリメントの原料には、天然由来の抽出物が使われることが多く、魚介や大豆など食物アレルギーの原因となる素材が含まれている可能性があります。自分や家族にアレルギーがある場合は、購入前に必ずアレルギー表示を確認する習慣をつけましょう。
原料の産地と製造国を見極める
サプリメントの品質を左右するもうひとつの要素が、原料の産地と製造国です。食品表示基準では、原材料名の欄に最も多く含まれている原材料について、原産国の表示が義務づけられています。
近年、コスト削減のために海外製の原料や製品が多く流通しています。海外製のサプリメントがすべて品質が低いわけではありませんが、注意すべき点がいくつかあります。まず、日本とは表示のルールが異なるため、添加物の表示義務がない国もあります。英語が読める方でも、表記されている添加物の名称や目的を正しく理解することは難しいでしょう。
また、欧米人向けに設計されたサプリメントは、日本人には配合量が多すぎる場合があります。食文化や体格の違いから、日本人には十分に足りている栄養素が過剰に含まれていることもあり、過剰症のリスクにつながる可能性があります。
国内製造の製品であっても、原料が海外から輸入されているケースは多くあります。原料の品質管理が適切に行われているかを確認するには、製造工場だけでなく原料供給元のGMP認証の有無や、第三者機関による品質検査の実施状況なども参考になります。
メーカーのウェブサイトで製造工程や品質管理体制について詳しく説明している企業は、透明性が高く信頼できる傾向にあります。逆に、原料の産地や製造工程についての情報開示が少ない製品は、慎重に検討した方がよいでしょう。
薬機法を理解して正しい情報を得る
サプリメントを選ぶ上で忘れてはならないのが、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)との関係です。この法律を理解しておくことで、誇大広告に惑わされず、正確な判断ができるようになります。
薬機法では、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の5つが規制対象とされています。サプリメントはこの中に含まれておらず、あくまで「食品」として扱われます。しかし、だからこそサプリメントには厳格な制限があるのです。
最も重要なのは、サプリメントで病気の治療や予防を謳うことは法律で禁止されているという点です。「関節の痛みが治る」「糖尿病を予防する」「がんに効く」といった表現は、たとえ事実であったとしても薬機法違反となります。これは消費者が医薬品と誤認することを防ぎ、適切な医療を受ける機会を失わせないための措置です。
一方で、機能性表示食品や特定保健用食品、栄養機能食品といった保健機能食品については、国が定めた範囲内で一定の機能性表示が認められています。たとえば機能性表示食品なら「おなかの調子を整える」「脂肪の吸収をおだやかにする」といった表現が可能です。ただし、これらも届出や許可を受けた内容に限られます。
広告やパッケージに「効く」「治る」「改善する」といった医薬品的な表現があれば、それは違法な表示です。そのような製品は避けるべきですし、もし購入してしまった場合は消費者庁や自治体の相談窓口に情報提供することも検討しましょう。
薬機法は製造販売事業者だけでなく、広告代理店やアフィリエイター、インフルエンサーなど、広告に関わるすべての人が対象となる「何人規制」という特徴があります。2020年には健康食品会社と広告代理店の役員・社員6名が薬機法違反で逮捕された事例もあります。違反した場合は懲役や罰金、課徴金といった厳しい罰則が科せられる可能性があります。
適切な表現としては「現代人に不足しがちなビタミンCを効率的に補給できる」「毎日の健康維持をサポート」「実感の早さが好評」といった、栄養補給や健康維持の範囲にとどまる表現なら問題ありません。サプリメントはあくまで食事で不足する栄養を補う補助的な役割であり、薬のような効果を期待すべきものではないという基本を忘れないようにしましょう。
実践的な選び方のポイント
ここまで見てきた知識を踏まえて、実際にサプリメントを選ぶ際のチェックポイントを整理します。
まず、表面のキャッチコピーは参考程度にとどめ、必ず裏面の表示を確認してください。原材料名の欄で、求めている栄養成分が最初の方に記載されているか、添加物が過剰に使われていないかをチェックします。
栄養成分表示で、1日の摂取目安量あたりにどれだけの栄養素が含まれているかを確認しましょう。厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準と照らし合わせて、適切な量かどうかを判断します。過剰摂取は健康被害につながることもあるため、多ければよいというものではありません。
GMPマークや第三者認証マークの有無も重要な判断材料です。マークがついていない製品でもGMP管理されている場合はありますが、マークがあれば客観的な品質保証の証になります。
アレルギーがある方は必ずアレルギー表示を確認し、不明な点があればメーカーに直接問い合わせることをおすすめします。多くのメーカーはカスタマーサポート窓口を設けており、電話やメールで質問に答えてくれます。
価格も品質を判断する一つの目安になります。サプリメントに関しては「安くて良いものはない」と考えるのが現実的です。適切な原料を使い、厳格な品質管理を行うにはコストがかかるため、極端に安い製品には理由があると考えるべきでしょう。ただし「高ければ良い」とも限らないため、価格だけでなく総合的に判断することが大切です。
メーカーの信頼性を確認するには、企業のウェブサイトで製造工程や品質管理体制、原料の調達先などの情報が公開されているかをチェックします。透明性の高い企業は消費者の信頼を大切にしている証拠です。
最後に、サプリメントはあくまで栄養補助食品であり、食事の代わりにはならないということを忘れないでください。バランスの取れた食事を基本とし、不足しがちな栄養素を補う目的で上手に活用することが、健康な生活への近道です。
まとめ
サプリメントの成分表示を正しく読み解くことは、自分の健康を守るための重要なスキルです。原材料名の順番、GMPマークの有無、添加物の種類と量、アレルギー表示、原料の産地など、確認すべきポイントは多岐にわたります。
薬機法で定められたルールを理解し、誇大広告に惑わされない判断力を身につけることも大切です。サプリメントは医薬品ではなく食品であり、病気を治すものではなく栄養を補うものだという基本認識を持ちましょう。
表面の魅力的な宣伝文句だけで選ぶのではなく、裏面の小さな文字に書かれた情報を丁寧に読み取る習慣をつけてください。そこには、メーカーの姿勢や製品の本当の価値が隠されています。正しい知識を持って賢く選択することで、あなたの健康をサポートする良質なサプリメントに出会えるはずです。
[参考]
・消費者庁「食品表示」
・厚生労働省「医薬品等の広告規制について」
・一般社団法人日本健康食品規格協会「GMPとは」
・消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」


