40年以上前の漫画が今こそ読むべき「防災バイブル」だった!さいとう・たかを『サバイバル』から学ぶ、現代のリアルな防災術

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倒壊した町並み

1976年から1980年まで週刊少年サンデーで連載された、さいとう・たかを先生の「サバイバル」。突然の大地震で家族や仲間と離れ離れになった少年・サトルが、極限状態の中で生き抜く姿を描いた作品です。

洞窟探検中に大地震に遭遇し、たった一人で生き残った中学生のサトル。彼を待っていたのは、文明の崩壊した世界でした。この漫画が凄いのは、サトルが特別な技能を持つスーパーヒーローではなく、ごく普通の少年だという点。私たちと同じ目線から、「本当に役立つサバイバル術」が詰め込まれているんです。

特に注目したいのが、作品のリアリティ。過酷な現実を通して、文明を失った現代人の理性と本能を浮き彫りにするという設定は、もし明日大災害が起きたら、私たちはどうなるのか——その答えがここにあります。


水の確保:3日分じゃ足りない真実

作品の中で、サトルが苦労する中のひとつが「水」の確保です。 作中では、川の水が飲めない中、サトルがシダの葉から朝露をすすったり、掘った穴からわき出した泥水をろ過して飲んだりする場面が詳細に描かれています。これは決して漫画の世界だけの話ではありません。
では、現代の私たちができる実践的な方法を考えてみましょう。

東京都や内閣府の防災ガイドラインでは、1人1日3リットルの飲料水を最低3日分、大規模災害の場合は1週間分備蓄することが推奨されています。

しかし、ここに落とし穴があります。この3リットルは飲料と調理用のみ。手洗いやトイレなどの生活用水は1日1人あたり10〜20リットル必要とされているのです。

[参考]
首相官邸ホームページ:災害が起きる前にできること
EV DAYS by東京電力エナジーパートナー:災害時の水の必要量は?備蓄方法や緊急時の水の確保方法を解説



即戦力になる備蓄法:ローリングストック

ローリングストック法とは、災害時に備えて水や食料を多めに買い置きし、消費した量に応じて補充するという備蓄方法です。わざわざ「防災用」の特別な水を買う必要はありません。普段から飲んでいる2リットルのペットボトル水を、常に1週間×家族人数分を切らさないように回転させていく。これだけで立派な備蓄になります。

私の家では、玄関下の収納、寝室のクローゼット、キッチンのパントリーの3カ所に分散して保管しています。一箇所が潰れても、他で確保できるからです。


緊急時の選択肢:携帯型浄水器

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、水道復旧まで最長で6ヶ月以上を要しています。
そこで注目したいのが携帯型浄水器。例えば「ソーヤー ミニ」や「セイシェル」「コッくん飲めるゾウ」といった製品は、川の水や雨水、お風呂の残り湯さえも飲料水に変えることができます。



食料:調理不要が鉄則

「サバイバル」の中で、サトルは生き延びるために様々な食料調達に挑戦します。海岸で魚を釣り、野山で食べられる野草を見分け、時には罠を仕掛けて小動物を捕獲する——。こうした原始的なサバイバル技術は確かに重要ですが、一つ決定的な問題があります。それは「知識と経験がなければ実行できない」ということ。

食べられる野草と毒草を見分けられますか?魚の捌き方を知っていますか?火起こしはできますか?

作品の中でサトルも、最初は何度も失敗を繰り返します。彼が徐々にサバイバル技術を身につけていく過程は、まさに「試行錯誤の連続」でした。

しかし現代の私たちには、もっと確実で安全な方法があります。それが「備蓄」です。


なぜ「調理不要」なのか

災害時には電気やガス、水道などのライフラインが停止するため、コンロや電子レンジが使えず調理が難しくなります。カセットコンロがあっても、限界があります。カセットボンベは消耗品です。また、避難所では火気使用が制限されることも多く、自宅が損壊していれば調理スペースすら確保できない可能性があります。

だからこそ「調理不要」の食品を選ぶのが賢明なんです。開ければすぐ食べられる、水を注ぐだけで完成する——これが災害時の鉄則です。


すぐ食べられる非常食リスト

主食系

  • 缶詰パン(パン・アキモト「PANCAN」)
  • ビスケット・クラッカー(カロリーメイト、リッツなど)
  • 羊羹(井村屋「えいようかん」)

おかず・栄養補給

  • ツナ缶、サバ缶、焼き鳥缶
  • そのまま食べられるレトルトカレー(温めなくても可)
  • ナッツ類、ドライフルーツ
  • チョコレート(板チョコを小分けに)

水・お湯を使う非常食(カセットコンロがあれば)

  • アルファ米(尾西食品「白飯」「五目ごはん」など)
  • カップ麺・インスタント麺
  • フリーズドライ食品(味噌汁、スープなど)


長期備蓄の本命:サバイバルフーズ

実は、防災のプロが選ぶ「究極の非常食」があります。それが「サバイバルフーズ」です。

一般的な非常食の賞味期限が3〜5年なのに対し、サバイバルフーズは常温で25年間の超長期保存が可能。フリーズドライ製法で水分を最大98%除去し、脱酸素剤で缶内の酸素を取り除いているため、四半世紀も品質を保てるんです。

メニューはチキンシチュー、野菜シチュー、チキンカレー、洋風雑炊、クラッカーなど豊富。お湯や水を加えて食べるのが基本ですが、フリーズドライのまま食べることも可能です。1缶あたり小缶で約2.5食分、大缶で約10食分。

私が注目したのは「デラックスセット」。例えば大缶6缶セット(約80食相当)なら、家族4人で7日分をカバーできます。価格は決して安くありませんが、25年間買い替え不要と考えれば、トータルコストは一般の非常食より割安になります。

[参考]
防災のセレクトショップSEI SHOP:サバイバルフーズとは



栄養バランスを整える:サバイバルフーズサプリメント

災害時の食事は炭水化物に偏りがち。そこで同じシリーズから「サバイバルフーズサプリメント」も展開されています。一般的なサプリメントの賞味期限が2年程度なのに対し、こちらは7年保存が可能で長期備蓄しやすいサプリメントです。

[参考]
防災のセレクトショップSEI SHOP:サバイバルフーズ サプリメントとは




これらを3食/日×3日〜1週間分×家族人数で計算します。
でも、実際にはもっとシンプルに考えていい。普段から食べているレトルト食品や缶詰を、いつもより2〜3個多く買っておくだけで十分なんです。
本格的に備えたいなら、サバイバルフーズのような長期保存食を1セット持っておくと、精神的な安心感が違います。


トイレ問題:最重要課題

「サバイバル」では直接的な描写は少ないものの、サトルの衛生管理の工夫が見られます。実は災害時、トイレが最も深刻な問題になります。

阪神・淡路大震災が教えてくれたこと

1995年の阪神・淡路大震災では、多くの避難所でトイレが数日間使えない状態が続きました。水道が止まり、下水管が破損し、トイレは瞬く間に汚物であふれかえった——。

その結果、何が起こったか。

人々はトイレに行くのを我慢し始めたのです。水分摂取を控え、食事の量を減らし、できるだけトイレに行かないようにする。これが深刻な健康被害を引き起こしました。

トイレ問題が、命に関わる二次災害を生んだのです。

水洗トイレの現実

水洗トイレを流すために必要な量は1回6〜8リットル、1日5回で30〜40リットル、4人家族なら毎日浴槽1杯分の水が必要です。
貴重な飲料水をトイレに使うわけにはいきません。お風呂の残り湯を取っておいても、せいぜい2日分。それ以降はどうするのか?

現実的ではありません。だからこそ、水を使わない非常用トイレの準備が不可欠なのです。



非常用トイレの準備が命綱

私が実際に購入したのは「BOS 非常用トイレセット」。便器に被せる袋と凝固剤、そして防臭袋のセットです。1回分約100円と考えれば、1人×5回×7日分で3,500円。家族4人で14,000円。この投資で精神的な安心が買えます。

他にも「サンコー 簡易トイレ」のような組み立て式トイレもありますが、自宅のトイレが使える状態なら袋タイプで十分です。


明かりと情報:電力備蓄の新常識

作品の中では、夜の暗闇が何度もサトルを襲います。月明かりもない真っ暗な夜、サトルは恐怖と孤独に耐えながら、焚き火の明かりだけを頼りに夜を過ごします。暗闇の中では、どんな危険が潜んでいるかわからない。野生動物が近づいてくるかもしれない。火を絶やすまいと、一晩中薪を足し続ける——。

現代では照明だけでなく、スマートフォンの充電こそが死活問題です。

スマホがなければ生き延びられない時代

考えてみてください。災害が起きたとき、あなたは何で情報を得ますか?

  • 家族の安否確認(LINE、災害用伝言板)
  • 避難所の場所と開設状況
  • 給水車や支援物資の配布場所
  • 交通機関の運行情報
  • 余震や二次災害の警報

これらすべて、今はスマートフォンで確認します。テレビが見られない、ラジオを持っていない、新聞も届かない——そんな状況では、スマホだけが外界とつながる唯一の手段になるのです。

スマートフォンが災害時の生活の必需品となった今、防災に電力の備蓄は欠かせません。バッテリーが切れた瞬間、あなたは情報から孤立します。それは現代において、サトルが暗闇の中で一人取り残されたのと同じ状況なのです。

実戦的な電力確保アイテム


衛生管理:感染症を防ぐ知恵

「サバイバル」の中で、サトルは過酷な環境の中で生き抜くために、食料の確保や水の調達だけでなく、さまざまな工夫をしています。文明社会では当たり前だった毎日の入浴、歯磨き、着替えができなくなった時、人はどう対処すればいいのか——。作品はそんな状況をリアルに描き出しています。

避難所では、衛生環境の悪化が深刻な問題となります。水が使えないため手を洗えず、トイレの後も消毒できない。下着を替えられない日が続き、歯磨きもできない。この状態が数日、数週間と続くとどうなるか——感染症の集団発生です。

さらに見過ごせないのが、精神面への影響です。「体が汚れている」「臭いがする」という自覚は、人の自尊心を深く傷つけます。避難所で人と接することが苦痛になり、孤立していく——。衛生環境の悪化は、コミュニティの絆さえも壊しかねないのです。

災害時には衛生環境の悪化が精神的負担になりやすく、体調不良にもつながりやすいため、しっかり備えておく必要があります

「水なし衛生」という発想

ここで重要なのは、「水を使わずに清潔を保つ」という発想の転換です。水が貴重な災害時、洗う・流すという従来の方法は現実的ではありません。

最小限の衛生用品セット

  • ウェットティッシュ(ノンアルコール・アルコール両方)
  • 手指消毒液(携帯用ポンプボトル)
  • マスク(不織布)
  • トイレットペーパー(芯なしタイプは省スペース)
  • 生理用品(女性用・多めに)
  • 歯磨きシート(水なしで使える「歯みがきティシュ」)
  • ボディシート
  • ドライシャンプー(資生堂「フレッシィ ドライシャンプー」など)

水が使えない状況を想定して、「水なしで使える」ものを選ぶのがコツです。


今日からできる3つのアクション

「サバイバル」のサトルは、何の準備もないまま突然の災害に見舞われました。洞窟から出た瞬間、世界は一変していた——家も、道も、見慣れた風景も、すべてが消えていました。

でも私たちには「備える時間」があります。

これは、サトルにはなかった決定的なアドバンテージです。明日来るかもしれない災害に対して、今日から準備を始められる。この特権を活かさない手はありません。

アクション1:家族会議を開く

「防災」と聞くと大げさに感じるかもしれませんが、まずは30分だけ、家族で話し合う時間を作ってください。

話し合うべき3つのこと

  1. 避難場所の確認
    • 最寄りの指定避難所はどこ?(小学校、中学校、公民館など)
    • 自宅から徒歩で何分かかる?
    • 避難経路に危険な場所(ブロック塀、自販機、古い建物)はないか?
  2. 連絡方法の確認
    • 災害用伝言ダイヤル「171」の使い方を家族全員が知っているか?
    • 遠方の親戚を「連絡中継地点」に決めておく(被災地外なら電話が繋がりやすい)
    • LINEの「ノート」機能で安否確認ルールを事前に共有
  3. 備蓄品の保管場所
    • 水、食料、非常用トイレはどこに保管する?
    • 家族全員が場所を把握している?
    • 懐中電灯やモバイルバッテリーは各自の寝室にある?
    • 玄関に持ち出し用の防災リュックを置いている?

この会議のポイントは、全員が同じ情報を共有すること。お父さんだけ、お母さんだけが知っていても意味がありません。小学生のお子さんにも、きちんと説明してあげてください。



アクション2:スーパーで「いつもの買い物+α」

「防災のために特別な買い物をする」と考えると、つい後回しにしてしまいますよね。でも、普段の買い物にちょっとだけプラスするだけなら、今日から始められます。

  • いつも買う缶詰を1個→3個に
  • レトルトカレーを2個→5個に
  • ペットボトル水(2L)を1本→3本に

これを毎週続けるだけで、1ヶ月後には自然と1週間分の備蓄が完成します。

ローリングストックのコツ

  • 賞味期限が近いものから消費する
  • 使った分は次の買い物で必ず補充する
  • 普段食べないものは備蓄しない(非常時こそ食べ慣れたものを)
  • スマホのリマインダーで「毎週土曜日=備蓄チェック日」に設定


アクション3:防災セットで一気に揃える

「何から始めればいいか分からない」「一つずつ選ぶのが面倒」という方は、ラピタの「防災士が監修した防災仕様の防災セット」のような市販品から。基本アイテムが揃います。

防災セットを選ぶ3つのポイント

  • 防災士が監修しているか
    素人が作ったセットより、専門家の知見が反映されたものを
  • 何日分をカバーしているか
    最低3日分、できれば7日分の内容があるか確認。家族の人数に合わせて複数セット購入も検討する。
  • 実際に背負えるか
    リュックが重すぎないか(目安:成人で15kg以下)、女性や高齢者でも持ち運べるか。子ども用の軽量版も検討する。

注意点:防災セットを買って満足してはいけません。

  • 年に1回は中身を確認(賞味期限、電池の液漏れなど)
  • 実際にリュックを背負ってみる(重すぎたら減らす)
  • 自分に必要なもの(常備薬、メガネなど)を追加する



「完璧」を目指さなくていい

ここまで読んで「大変そう」と感じた方もいるかもしれません。
大丈夫です。最初から完璧を目指す必要はありません。

  • 今週は家族会議だけ
  • 来週はペットボトル水を3本買う
  • 再来週は缶詰を買い足す

こんなペースで十分です。何もしないよりも、小さく始める方が100倍マシなんです。

サトルのように何の準備もないまま災害に遭うのか、それとも少しでも備えた状態で迎えるのか。その差は、生死を分けるほど大きいのです。


まとめ:明日は我が身の覚悟を

「サバイバル」は、文明を失った現代人の理性と本能を描く作品です。
サトルの冒険は決してフィクションではありません。南海トラフ地震、首都直下地震——私たちが生きている間に、70〜80%の確率で大災害が起こると予測されています。

でも怖がる必要はありません。知識と準備さえあれば、サトルのように生き延びることができます。むしろ、何も備えていない不安の方がよほど恐ろしい。

今日から始める防災は、特別なことじゃない。いつもの生活に、ちょっとだけ「もしも」を足すだけ。それが、あなたと大切な人の命を守る第一歩です。

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