昭和5年創業の老舗甘味処で味わう、神田・竹むらの揚げまんじゅう
食品・グルメ
東京・神田須田町を散歩していると、ふと目に留まる木造の建物があります。軒下に吊るされた木製の提灯、入母屋造りの重厚な屋根。それが昭和5年(1930年)創業の老舗甘味処「竹むら」です。
私は散歩が好きで、神田界隈をぶらぶら歩くことがあるのですが、竹むらの前を通るといつも足が自然に止まってしまいます。それほど、この場所には「ここで一息つきたい」と思わせる、独特の空気感があるのです。
今回は竹むらの名物「揚げまんじゅう」に焦点を当て、その味わいや歴史的な背景、訪れる際に知っておきたいことをまとめてご紹介します。甘いものが好きな方にはもちろん、歴史ある建物や東京散歩が好きな方にも、きっと楽しんでいただける内容になっています。
95年の歴史を持つ建物は「東京都選定歴史的建造物」—戦火を逃れた神田の奇跡
竹むらが建つ神田須田町は、関東大震災や第二次世界大戦の空襲という二度の大きな試練をくぐり抜けながらも、昔ながらの建物が今も残る奇跡のエリアです。この界隈には「神田まつや」「いせ源」「ぼたん」といった戦前から続く老舗が軒を連ねており、東京でありながらまるで時代が止まったかのような空気が漂っています。
竹むらの建物は入母屋造りの木造3階建てで、2階の欄干には竹と梅の模様が彫られています。東京都景観条例に基づく「東京都選定歴史的建造物」にも選定されており、建物そのものが一種の文化財といえる存在です。
近年では2024年のNHK連続テレビ小説『虎に翼』で「竹もと」という名のお店として登場し、若い世代にも広く知られるようになりました。かつては作家・池波正太郎も通い詰めた名店として知られています。
席に着くとまず運ばれてくる「桜湯」—甘味を引き立てる粋なおもてなし
竹むらで席に着くと、お水やお茶ではなく「桜湯」が最初に運ばれてきます。桜の塩漬けを浮かべた、ほんのりと塩気のあるお湯です。甘味を食べる前にこれをひと口飲むと、口の中がすっきりして、揚げまんじゅうやあんみつの甘さがより引き立つのです。
店内はテーブル席と小上がりのお座敷に分かれており、どちらも12席ほどのこぢんまりとした空間です。障子から差し込む光、木の柱の質感、欄間の細工……。店内の撮影は基本的に禁止されていますが(手元の料理のみOK)、その代わりに目で見て五感で感じることができる贅沢な空間が待っています。
現代の東京では珍しい「現金のみ」の対応という点も、老舗の矜持を感じさせます。都心のど真ん中でこれだけ昭和の空気をそのまま残しているお店は、もはや竹むら以外にはないかもしれません。訪れるたびに、「こういう場所が今も続いているんだな」と、どこかほっとした気持ちになります。
名物「揚げまんじゅう」の大きな特徴は、揚げたふかふかの衣と、その中に詰まった甘さ控えめのこしあんのバランスです。
揚げたてを口に入れた瞬間、衣のサクッとした食感とともに香ばしい風味が立ち上り、続いて熱々のこしあんのやわらかな甘さが追いかけてきます。しつこさは一切なく、「もう一個食べたい」と思わせるほど軽い食べ心地なのです。昔から男性客にも人気が高い一品というのも、なるほどと納得できます。
テイクアウトも可能だけど、やっぱり揚げたてをその場で—訪問前に知っておきたいこと
揚げまんじゅうはテイクアウト(お土産)にすることも可能で、2個から購入できます。ただし、時間が経つにつれて衣がしっとりとしてきて、揚げたてのサクサク感は失われていきます。もちろんそれはそれで美味しいのですが、せっかく竹むらまで足を運ぶなら、ぜひ店内でできたての揚げまんじゅうを味わってほしいと思います。
また、週末や観光シーズンには揚げまんじゅうが早い時間に売り切れてしまうこともあるようです。夕方遅くに訪問すると品切れになっていた、という口コミも見受けられるため、確実に食べたい場合はなるべく早めに出かけるのがおすすめです。
定休日は日曜・月曜・祝日で、いわゆる平日のみの営業です。土曜日は営業していますが、土曜の昼過ぎには満席になることもあります。サラリーマンの街らしく平日に合わせた営業スタイルで、これもまた竹むららしいといえるかもしれません。
まとめ
竹むらの揚げまんじゅうは、創業90年以上の歴史の中で磨き上げられた、シンプルながらも奥深い一品です。揚げたサクふわの衣と、甘さを抑えた専用こしあんのバランスは、いちど食べたら忘れられない味わいです。
揚げまんじゅう以外にも、あんみつや、あわぜんざい、ところてんなどのメニューも豊富。何を食べても絶品です。
昭和初期の建物の中でいただく甘味は、食べること以上の体験をもたらしてくれます。神田界隈を散歩する機会があれば、ぜひ「竹むら」の暖簾をくぐって、桜湯をひと口飲みながら、揚げたての揚げまんじゅうを味わってみてください。
忙しい毎日の中でも、この場所だけはゆっくりと時間が流れているような、そんな心地よさに出会えるはずです。

